目次
ジャンプはハムストリングスを意識して跳ぶべし!
「ジャンプはハムストリングスを意識して跳ぶべし!」
「間違った跳び方を続けていると膝の痛みや故障の原因となり、太ももも太くなりますよ!」
これは管理人が実際に指導しているテコンドークラスの生徒さんに教えている内容です。
そしてこれは跳び蹴りの練習をするテコンドーに限らず、ジャンプ、つまり跳ぶ動作をよく行うスポーツ全般に共通する重要なことです。
実際、管理人がこのことを最初に学んだのは、最もジャンプをするスポーツの一つであるバスケットボールの元コーチで現在初動負荷トレーニングジムのトレーナーをしているU氏からです。
ということで、今回の記事では、
膝への負担が少なく、太ももが太くなることのない正しいジャンプのやり方
ジャンプ力を上げると信じて行われている誤ったトレーニング法
正しいジャンプをマスターするためのトレーニング法
についてお伝えします。
正しいジャンプのやり方と誤ったジャンプのやり方
さて、いきなりですが、正しいジャンプのやり方と誤ったジャンプのやり方について書きます。
なお、ここでの正しいとは、膝への負担を抑え、太ももが太くなったりせず、(無駄な体力や筋肉を使わず)楽に跳べること、を要件としています。
【正】
全身リラックスした状態で、
体の背面、特に太もも裏のハムストリングスからお尻にかけての筋肉の伸展の力を使い、
全身の筋肉を連動させてジャンプする
【誤】
全身を緊張させた状態(飛ぶぞと意気込む)で、
体の前面、特に太もも表の大腿四頭筋の筋肉の収縮の力を使い、
脚だけの力で地面を押すようにジャンプする
いかがでしょう。
きっと多くの方が【誤】の方の跳び方をしているのではないでしょうか。
恥ずかしながら管理人自身も以前は誤った跳び方をしていました。
また、テコンドークラスの生徒さんを指導していても、管理人のように運動の苦手な方は誤った跳び方をしています。
この誤った跳び方を継続すれば、遅かれ早かれ膝に負担が来て、痛みや故障の原因となります。
特に、膝の十字靭帯や半月板を傷めたことのある方はすぐに痛みが出ると思います。
また膝の軟骨がすり減り、修復力も落ちたアラフォー以降の年齢の方も要注意です。
でも、ご安心ください。
この記事を読み進めていただけば、正しいジャンプのやり方とそのトレーニング法についてしっかりと理解していただけますし、早速ジャンプフォームの改善、ジャンプ力向上に取り組んでいただくことができます。
ジャンプ力を上げるのにスクワットは大間違い!
あなたはジャンプする時にどこの筋肉を一番使っていますか?
もちろんジャンプは全身を連動させた動作ですので一ヶ所だけの筋肉を使うわけではありません。
それでも、太もも前面の大腿四頭筋を使っているという人が多いのではないでしょうか。
そして、それが正しいと思っている方がほとんどだと思います。
実際、ジャンプ力を上げるために、それが良いと信じてスクワット運動をしている方もいます。
何を隠そう昔の管理人もその一人でした。
果たしてその結果はと言えば、スクワットはジャンプ力向上にはまったくつながらなかったです。
しかも、つながらないだけでなく
実競技での運動パフォーマンスが落ちる
膝への負担が増えて練習後違和感や痛みが出やすくなる
と完全に逆効果でした。
さらには
太ももは無駄に太くなってスキニーのパンツは履けなくなる
と負のオマケ付きで、本当に何一つ良いことはなく散々でした。^^;
バスケット選手やバレーボール選手の脚は細くしなやか
一般的にサッカー選手や競輪選手の太ももは太く大きく発達していることが多いです。
それに対して、競技中にジャンプする回数の多いバスケット選手やバレーボールの選手の太ももは引き締まってはいるものの細くしなやかです。
実際、バスケットボールの神と言われるマイケル・ジョーダン選手の画像を見ても
世界一美しいバレーボール選手と言われるカザフタンのサビーナ・アルシンベコバ選手の画像を見ても
非常にスラリとした脚です。
ちなみに米国女子サッカー選手の場合は
お尻周りや太もも前面の筋肉がかなり太くたくましく発達していることが分かります。
つまり、高くジャンプすることにおいては、太もも前面の大腿四頭筋はほとんど関係していないことが分かります。
そのため、繰り返しになりますが、ジャンプ力を向上させるためにスクワットをして太もも前面を鍛えるのは全くの見当違いなのです。
体の筋肉の前面はブレーキで、背面がアクセル!
それでは、なぜジャンプ力アップにスクワットが効果がないのでしょうか?
これを上手く説明している本があります。
それは、イチロー選手が1999年以降20年近くずっと継続している初動負荷トレーニングジムを展開するワールドウィング社の元社員で、現ロコムーブ代表の中嶋輝彦氏が書いた『動ける身体を一瞬で手に入れる本』という本です。
余談ですが、こちらの本には続編『一瞬で動ける身体に変わる!』も出ています。
ただ、前述の『動ける身体を一瞬で手に入れる本』はアマゾンで1円で中古本が出ていますので、最初はそれを読んで試してみてから続編を買っても良いと思います。
さて、ここでは本の中の重要な箇所をピックアップします。
「鍛えるべきは関節を曲げる『屈筋』ではなく、関節を伸ばす『伸筋』である」
「関節を伸ばす伸筋はほとんど、身体の『後面』に存在」
つまりジャンプ力を向上させたいのなら、膝を曲げるために収縮する屈筋「大腿四頭筋(太もも前面)」をスクワットで鍛えても意味がないのです。
それよりも、膝を伸ばすための伸筋「ハムストリングス(太もも背面)」を意識的に使えるようにする方がはるかに効果が出るのです!
「なんだ、そうか。それならハムストリングスの筋肉を鍛えればいいんだ。今度からジムではスクワットでなくレッグカールをやるようにしよう。」
いやいや、ちょっと待ってください。
それは早合点というもので、大きな落とし穴です。
実際、この落とし穴にハマってまったく効果の出ないトレーニングをしている陸上アスリートもけっこういるのです。
ジャンプ力を上げるのにレッグカールは役立たない!
身体の背面の筋肉が推進力、出力系であることは初動負荷トレーニングのトレーナーでなく、一般のトレーナーでも知っていることです。
そのため、短距離走や走り幅跳びの選手に、ハムストリングスを鍛えるためマシンによるレッグカールをメニューに取り入れたトレーナーもいます。
しかし、残念ながらレッグカールによるハムストリングスの筋肉強化では、
ジャンプ力が向上した、
短距離走のタイムが短くなった、
走り幅跳びの距離が伸びた、
という競技パフォーマンスを向上させる結果にはなりませんでした。
それどころか、かえって競技パフォーマンスが落ちる選手もいたのです。
それもそのはず。
本来、体の筋肉は連動させてつかうものです。
そのため、レッグカールなど単一の筋肉のみをターゲットとした筋トレは、見た目の肥大効果や持久力アップの効果はありますが、必要な筋肉を上手く連動させることには役立たないのです。
さらには鍛えた筋肉ばかりをアンバランスに使ってしまうことで、
運動パフォーマンスは落ちる
怪我のリスクは増える
などデメリットの方が大きいのです。
それでは、ジャンプ力を向上させるには一体どうしたら良いのでしょうか。
その答えこそが、冒頭で書きました
「ジャンプはハムストリングスを意識して跳ぶべし!」
なのです。
ただ具体的にどうしたら良いのか分かりづらいと思いますので、それをお伝えします。
ハムストリングスを意識的に使ってジャンプ力をアップさせる方法
ジャンプ力をアップさせる基本的な方法は以下の2ステップです。
1.ハムストリングスを意識し、スイッチを入れる
2.1の後、自らの競技に必要なジャンプ動作を何回か試す
あとは、また1に戻り、その後2というセットを複数回行います。
ハムストリングスを意識し、スイッチを入れる方法
まず、一般の人で日常ハムストリングスを意識している方は少ないと思います。
そもそもハムストリングスという単語自体、馴染みがないかもしれません。
プロは別として、スポーツや格闘技をしている方でもハムストリングスを意識的に使っている、または使おうと意識している方は、それほど多くないような印象を受けます。
また、運動神経のある方、格闘センスのある方は誰かに教えられるでなく本能的にハムストリングスを使った動きをしていますが、多分指摘されなければ、それを当たり前と思っているので自覚していないと思います。
ということで、誰にでもすぐ簡単にハムストリングスを意識することができ、それを使えるようにスイッチを入れる方法をお伝えします。
それがこちらです。
まずは、膝の高さほどのフラットベンチを探します。
自宅で筋トレをしている方なら
上記画像のようなフラットベンチをお持ちかもしれません。
もし、お持ちでない方は、大きめの椅子などで代用することも可能かと思います。
ただ、フラットベンチは、アマゾンで6,500円ほどで購入することができますので、買うことを検討しても良いかもしれません。
↓ ↓ ↓
さて、ここで大事なポイントは
上記イラストのように、
ベンチの高さが膝ぐらいであること(膝頭がベンチに密着しているのが望ましい)
ベンチが後ろにズレたりしないようにすること(前述の画像のようにベンチを壁際につけると良いです)
です。
その状態でまっすぐ立ち、足はベンチの下にあるようにします。
これで準備完了です。
その準備状態から
上記イラストのように股関節を曲げ、上体を前方に傾けます。
ここで大事なポイントは
全身をリラックスさせること
しっかりと股関節から曲げるようにすること
ハムストリングスが伸びるのを意識すること
です。
また補足ですが、この時
顔は下に向けることなく前を見ており
足は踵が浮いたりすることなく、足裏全体が床に接地している
ことを確認してください。
あとは、この動作を10回~20回ほど繰り返します。
ここで追加で重要な補足ですが、これは筋トレやトレーニングが目的ではありません。
そのため
この動作を早く行おうとしたり
回数を多くやろうとしたり
するのは、ハムストリングスを意識して、ハムストリングスを使えるようにするという本来の目的からは外れてしまいます。
さて、このハムストリングスの意識づけと、そのスイッチを入れる動作が完了したら、後は自分の競技に合ったジャンプの動作を何回か繰り返し、ハムストリングスの伸展を活用したジャンプフォームに改善していくようにします。
なお、多くの方は太もも前面をつかったジャンプと着地のやり方が体に染みついていると思います。
その染みついた癖を治すのは一朝一夕では難しいです。
そのため、じっくりと焦らず長期的に取り組んでいただくことをお勧めします。
一般的なスクワットとは、目的も効果も完全に異なります!
最後、補足をします。(今回の記事補足が多いですね笑)
さきほど紹介したハムストリングスを意識してスイッチをいれる動作を見て、もしかしたら
「それって膝を前に出さないスクワットではないのでしょうか」
と疑問に思われた方もいるかもしれません。
上記の画像は、一般のジムでよく言われている
『膝をつま先より前に出さないスクワット』
のフォームです。
確かに動作の見た目は似ています。
しかし、ポイントは繰り返しになりますが、
1.全身をリラックスさせること
2.股関節から上体を折りたたむように曲げる
3.ハムストリングスが伸びていることを意識する
の3点です。
さらに、この時に、太もも前面の大腿四頭筋はなるべく緊張させないようにします。
つまり、太もも前面の大腿四頭筋をターゲットとし、大腿四頭筋の筋肉の発達を目的としたスクワット動作とは根本的に異なるのです。
筋トレに慣れている方は、筋肉を意識することで緊張させ収縮させる癖がついています。
動作中は全身をしっかりとリラックスさせ、大腿四頭筋に限らずどこにも無駄な力みや緊張が発生しないように気を付けてください。
余談ですが、この動作に限らず、世の中の卓越したアスリートや達人の動きは、すべて一般の人のそれとは似て非なるものです。
その外からパッと見ただけでは分からないような、ほんのわずかな違いにこそ大きな違いを生む秘密が隠されているのです。
そもそもオリンピック級のアスリートや武道の達人達は身体意識からして一般人とは異なります。
さらに、その体の使い方は、
全身力みのないリラックスした状態で
その動作に必要な使うべき正しい筋肉を
正しい順番で連動させ
筋肉とエネルギーの使用を必要最小限に抑えた
本当に理にかなったものです。
だからこそ、
筋肉を過剰に肥大発達させることなく
怪我のリスクを最小限に抑え
ることができるのです。
また筋肉の緊張に依存した動きとは異なりますので、年齢とともに筋力が落ちても、その動作のキレやパフォーマンスは衰えにくく、末永く愛する競技を楽しみながら続けることができます。
ということで、今回の記事はジャンプフォームの改善、ジャンプ力を向上させる方法をお伝えする内容ですが、それだけに留まらず、人によっては、新たな体の使い方に目覚め、進化するためのきっかけとなったかもしれません。
またそうであったのなら管理人も嬉しく思います^^
今回も最後まで記事を読んでくださり本当にありがとうございます。